九社の宮


境内の西方に位置し、御本殿を向い九社の神社が鎮座する。古来より氣比大神の御子神等関係の神々をお祀りする社として崇敬され、九社之宮として知られる。

◎天利劔神社
[あめのとつるぎじんじゃ]
祭神は天利劔大神。式内社、仲哀天皇当宮に参拝、宝劔を奉納せられ霊験いと奇しと云う。後に祠(ほこら)を建て天利劔宮と称え奉り御神徳をさずかる崇敬者は多い。

◎天伊弉奈彦神社
[あめのいざなひこじんじゃ]
祭神は天伊弉奈彦大神(あめのいざなひこのおおかみ)。式内社で續日本後記に、承和7年8月越前國従二位勲一等氣比大神御子無位天利劔神、天比女若御子神、天伊佐奈彦神、並従五位下を奉授せらるとある。

◎天伊弉奈姫神社
[あめのいざなひめじんじゃ]
祭神は天比女若御子大神。式内社、社家伝記に、伊佐奈日女神社、伊佐奈日子神社は造化陰陽の二神を祀りしものなりと云う。古来縁結びの御神徳が顕著である。

◎伊佐々別神社
[いささわけじんじゃ]
祭神は御食津大神荒魂神(みつけおおかみあらみたまのかみ)。当宮奮記によれば「古来漁捕の輩之を尊敬し奉る」とある。この社殿が北面しているのは漁撈を守る神であるから、北方の海を向いているのだと伝えられている。往昔応神天皇皇太子の時当宮に参拝され、夢に大神が現れ御名を易(か)うる事を約しまた仰せの通り翌朝浜に出てみると笥飯の浦一面に余る程の御食(みけ)の魚(な)を賜わった。天皇大いに嬉び給うと共に御神威を辱なみ、武内大臣に命じて新たに荒魂(あらみたま)を勧請崇祀せしめられたのがこの社である。

◎擬領神社
[おおみやつこじんじゃ]
社記に武功狹日命(たけいさひのみこと)と伝え、一説に大美屋都古神(おおみやつこのかみ)又は玉佐々良彦命(たまささらひこのみこと)とも云う。奮事紀には「蓋し當國國造の祖なるべし」と載せてある。

◎鏡神社
[かがみのじんじゃ]
神功皇后角鹿に行啓の際種々の神宝を当宮に捧げ奉った。其の中の宝鏡が霊異を現わされたので別殿に國常立尊(くにのとこたちのみこと)と共に崇め奉り天鏡宮(あめのかがみのみや)と称え奉ったと云う。慈悲の大神として知られる。

◎金神社
[かねのじんじゃ]
素盞鳴尊(すさのおのみこと)を祀り、家内安全の神とされている。垣武天皇延暦23年8月28日、僧空海当宮に詣で、大般若経1千巻を転読求法(てんどくぐほう)にて渡唐を祈る。嵯峨天皇弘仁7年に復び詣でて当神社の霊鏡を高野山に遷して、鎮守の杜とした。即ち紀州高野山の氣比明神はこれである。

◎林神社
[はやしのじんじゃ]
林山姫神(はやまひめのかみ)を祀る。福徳円満の大神として崇敬者が多い。延喜式所載の越中國礪波郡林神社は当社と御同体である。垣武天皇延暦4年勅に依り僧最澄氣比の宮に詣で求法を祈り、同7年再び下向して林神社の霊鏡を請ひ比叡山日吉神社に遷し奉った。即ち当社が江州比叡山氣比明神の本社である。

◎劍神社
[つるぎじんじゃ]
御祭神は姫大神尊(ひめのおおかみのみこと)、剛毅果断の大神として往古神明の神託があったので、莇生野村(旧敦賀郡)からここに勧請し奉ったと伝えらる。